ベアービーの療育とは?

目で見て触って動かして、大切にしたい実体験を通した学び

ベアービーでは、ひとりひとりの凸凹に合わせて、得意なことは伸ばしつつ、苦手なことも、スモールステップで習得していけるよう導きます。就学に向けて、学習が理解できる力をつけること 「学習レディネス」を支援のコンセプトとしています。

学びを通して、わかる! できる! を重ねる中で育まれる自己(じこ)効力感(こうりょくかん)を得る体験を通して、新たなことへ向かう、意欲・関心の芽を育てることも大切にしています。

ー学習レディネス  とは?ー
例えば、見る力が弱いと、黒板の字を写すのに時間がかかります。文字や行を飛ばして読んだり、音読についていけないこともあります。聞く力が弱いと、指示が聞き取れずに、やる気がないと、注意を受けることが多くなるかもしれません。学習の土台がしっかりできていないと、すべての教科でつまずきやすくなってしまいます。
学習を習得するために必要な力を就学前につけることが、学習のつまずきを減らすことにつながります。心理学では、学習の前提となる、知識・経験・能力といった事前準備が整っていて、習得できる段階になってはじめて、教育や学習が有効になることをあらわす概念として「学習レディネス」という言葉が使われます。ゲゼル (Gesell,A.L.)  によって提唱された成熟(せいじゅく)優位説(ゆういせつ)という理論が基となり、ソーンダイク (Thorndike, E.L.) により提唱されました。

情報の受け取りがうまくいかないと、どんなことが起こるでしょうか?

  • 落ち着きがない 
  • 言葉の遅れ
  • 協調運動の問題(不器用さ)
  • 視覚や音刺激・触覚・前庭感覚に対して過敏
  • 感覚刺激に鈍い
  • 対人関係
  • 行動をコントロールできない
  • 自尊感情の低下

学童期には、学習面での凸凹が学びを困難にすることがあります。発達に凸凹がある場合、学習面でも得意と苦手の差が大きく、LD(エルディー) (Learning Disorder限局性(げんきょくせい)学習障害) を伴うこともあります。幼児期・低学年のうちに、学習面で手掛かりをつかみやすくしておき、学習できる土壌(どじょう)を整えておくことが大切です。

学習を無理なく進めていくための「学習レディネス」を整えて、子どもに合わせた習得しやすい学習方法を提示できると、子どもの理解は進みますし、その子に合った方法でスキルの獲得・能力を伸ばすことができます。ですが、学習レディネスを整えるということは、早い時期から、文字を覚える、計算をするといった早期教育とは異なっています。ポイントは、次の通りです。

アセスメントを大切にしています

実際に支援内容を決める際、まず、子どもは今、どれくらいの力があって、どんな力を伸ばすことで、生きづらさを軽減することができるのか、子どもの持っている力を多角的な視点から見立てるアセスメントが大切です。例えば、ひとことで「文字を書くことが苦手」だといっても、様々な原因が考えられます。

✅文字 (形) を認識(にんしき)する苦手さがある? 
✅指先の巧緻性(こうちせい)が未熟で微細(びさい)運動(うんどう)の苦手さ (手先が不器用) がある? 
眼球(がんきゅう)の動きがスムーズでない? 
✅姿勢を保ったり注意集中が苦手 ??

とにもかくにも「遊び」にしちゃおう(実体験を通した学び

子どもは、生活の全てが遊びです。「遊び」の中で学びは、最も大きな学習効果を生みます。ベアービーでは、目で見て(さわ)って動かして、五感(ごかん)を使って学ぶ体験や、試行(しこう)錯誤(さくご)の中からの発見を大切にしています。

実際に物を動かして考えることで、ひらめきを得られやすくなります。楽しいから自然に身に付くし、またやりたい気持ちも沸いてきます。「わからない」「できない」と苦手意識を感じることなく、遊びに楽しく取り組んでいるうちに、いつの間にか、必要なスキルが習得しちゃえるなんて、最高ですね。

スモールステップで自己効力感をたくさん感じる

発達に凸凹がある子どもは、目の前に障害物があると引き返すことを選択しがち…、あるいは、失敗が大きなダメージとなりかねない傾向にあります。確実に乗り越えられる小さな課題を設定することがわかりやすく、望ましいとされています。スモールステップで小さな成功体験を重ね、自己効力感 (やれている感じ) をたくさん感じることができれば、モチベーションを保って乗り越えていくことができます。

得意をみつける・劣等感を感じさせない

子どもはひとりひとり凸凹の形が異なりますので、子どもに合わせた習得しやすい学習方法を見つけ出す工夫が求められます。例えば、目で見る情報を理解すること (視覚情報処理) は得意だけど、耳から聞く情報処理が (聴覚情報処理) 苦手など、視覚と聴覚の情報処理の力に差がある場合、絵カードや写真で示すなど、得意な情報の取り方で説明を補足すると、理解しやすくなることがあります。「わからない」「できない」と苦手意識を感じさせない遊びの中で、必要なスキルをアップしていくことも大切にしています。

ベアービーの療育プログラムには、大きく分けてベーシックアドバンスの2つのプログラムから構成されています。ベイシックの中でも、さらに細かく細分され、「認知機能アッププログラム」「感覚統合療法」「ソーシャルスキルプログラム」と分けられています。

アドバンスについては、プレイセラピーなどの身体症状、神経症状化への対応プログラムで構成されています。

ベアービーの療育プログラムは、アセスメントに基づいて、身体面・学習面・社会面の3方向から、包括的に支援するプログラム構成を取っています。

図の歯車は、様々な力が備わって動き出すようになると、互いに好循環を生み、全体がより円滑に動き出します。子どもが、社会の中で、自分を発揮していけるようになる様子を表しています。

このプログラムは、専門性の高いアセスメントに基づいて計画されていて、子どもに合わせたオリジナルの内容となっています。楽しく基礎学力の土台作り、目で見て触って動かして、楽しい遊びで、知的能力アップのトレーニングをします。

遊びの中で、楽しく学習が理解できる力をつけていきます。認知機能アップは、植物でいえば、土づくりです。国語力、計算力をつけるより前に、「見る」「聞く」「想像する」「注意力」「記憶力」「推論・判断力」「体感力」「言葉の発達」「指先の巧緻性」「空間認知」などの力をつけることが必要です。これは、すべての行動の基盤で、学習習得のための土台・基礎力となります。

ベアービーでは、積み木やカードを使った課題・タブレット課題を通して、学習の基盤となる力をつけていきます。

人は、五感などを通して外部からの情報を受け取っていますが、見る(視覚)聞く(聴覚)から多くの情報を得ています。さらに、「前庭覚(回転・バランスセンサー)」「固有受容覚(力・関節の曲げ伸ばしのセンサー)」「ヒフ感覚(触覚)」の身体で感知する感覚(体性感覚)が、重要な役割を持っています。

感覚統合療法では、これら3つの体性感覚を体験することを通して、いろいろな活動を行うための
構え(レディネス)を作ります。

体性感覚の体験イメージ

感覚統合がうまくいかない場合、情緒面・対人面・言語面など、日常生活のさまざまな場面で困難さが生じることになります。

下の図の「感覚統合ピラミッド」は、感覚統合の成長段階を示しています。五感に加えて、前庭(ぜんてい)(かく) (回転・バランスのセンサー) 、固有(こゆう)(かく) (力のセンサー) 感覚(かんかく)基盤(きばん)となって、その上に「姿勢を保つ」など、より高次(こうじ)のスキルが順に積みあがっていくイメージです。

感覚統合ピラミッド

「コミュニケーションが苦手」「すぐに爆発する」「気持ちを言葉にすることが苦手」など、自己統制の弱さは、不適切な行動につながりがちです。子ども同士、あるいはスタッフとの関わりの中で、無理に自分の主張を通したり、逆に我慢(がまん)するのではなく、周囲の人に理解してもらいながら、適応的*な自己主張ができるようになることは、社会の中で、自分の力を発揮して生きていくための重要な力です。そのすべてが社会生活を送る上で大切なソーシャルスキルだと考えています。

*適応的とは:自分が望むことを、周囲の理解を得たり、ルールを守りながらできるようにすること

実体験からの学び

絵カードなどを用いた振る舞い方の学習に(とど)まらず、できるだけ、実体験を通した学びを大切にしています。応用の利きにくいASD傾向の子どもでは、ソーシャルスキルを学んでも、日常に合わせて活用できないことが多くあります。

そのため、ベアービーのソーシャルスキルトレー二ングは、子どものコミュニケーションの発達段階をアセスメントした上で、小集団の遊びやカードゲームなどを通して、他者との関わりを楽しみ、自分の感情を理解すること、良い関係を作っていける力、トラブルが起こった時の振舞い方やアサーション*などを段階的・実践的に学ぶことを通して対人スキルを身につけていき、「社会生活を円滑(えんかつ)に送るために必要な能力」を育みます。

*アサーション: 相手を尊重しながらも、自分の意見を主張して、相手に伝えることができるコミュニケーションスキル。例えば、おかしがもっと食べたいときには、ひっくり返って泣くのではなく、「もう一つください」と言ってみる。おもちゃを使いたい時に、友だちから無理に取り上げるのではなく、「貸して」と交渉したり、順番を待って使うといった行動です

(コグトレ学会HPより一部引用 https://cog-tr.net/

Psychological therapy プレイセラピー

こころを癒す

発達に凸凹のある子どもは、集団生活の中で、ストレスを感じることが多くなります。学校園に行こうとすると頭やお腹が痛くなる、気分の波が激しい、元気がない、チックや吃音(きつおん) (どもる) 、寝ている時に叫ぶ ((や)(きょう)) など症状化している場合、個別の心理療法を行うことができます。これら「二次障害」と呼ばれる問題は、今後、社会に出ていきにくい大きな問題となってしまうため、早期対応が大切です。

保護者の方とスタッフがお話をすることは、次の3つの点で重要だと考えています。

  • ベアービーの療育への理解を深めていただく 保護者の方と私たちスタッフの間に信頼関係が生まれることは、子どもにとって安心安全の基盤となります。よい関係性を作ることができれば、子どもは、より伸び伸び、そしてしっかり活動に取り組むことができます。
  • 子どもの理解を深めていただく これまで、育児が上手くいかなくて(あせ)ったり、苛立(いらだ)ちを感じられたり、ご自身のせいではないかと自責(じせき)を感じられた方もいらっしゃるでしょう。子ども特性への理解が深まれば、少し気持ちを軽くしていただけるかもしれません。また、問題となる子どもの行動が、保護者の方との関係性の中で生じていたなど、謎解(なぞと)きができるかもしれません。
  • 共同支援者として、環境調整をサポート 保護者の方は、子どもに関わる時間が最も長い重要な支援者です。その役割りをサポートし、養育環境を整えることで、子どもへのよい影響を倍増させることができます。

これらは、定期的な保護者面接だけではなく、日々の活動報告の中でも大切にしていることです。

ペアレントプログラムでは、発達の凸凹についての基礎知識を増やし、対応のしかたを学んでいただいきます。「子ども支援のキーパーソン」である保護者の方が、「子どもの理解を深めていただく」ことは大切です。同時に、子どもとの関わり方を学んでいただくことで、子どもとの関係がよくなりますので、「保護者の方のストレスを軽減させる」ことができます。保護者の方同士のつながりは、心強いものです。

ですが、子どもへの関わりやご家族の問題は、マニュアル通りにいかないこともたくさんあります。その点は、保護者カウンセリングにて、個別にお話していければと思っています。