複雑化・深刻化する問題「二次障害」にストップをかける

二次障害とは、発達障害などの障害をきっかけに、後に起こる症状や問題のことをさし、本人が受けるストレスやトラウマが引き金となって生じます。二次障害が生じる前に、早期に対応して予防することが大切です。

子どもたちを取り巻く現代社会は、様々な問題が複合的に作用して、生きにくい時代になっています。発達に凸凹があると、社会の中で感じる生きづらさはさらに強まります。

例えば・・・

集団生活で強まる生きづらさ

発達に凸凹がある子どもは、得意なことがある反面、苦手なことがあり、「やる気」では乗り越え(がた)い課題を抱えています。「好きなことはとことんやりたいけど、興味がないことに取り組めない…」といった興味の偏りがあると、自分のペースで生活することができない学校園生活では窮屈(きゅうくつ)さを感じることでしょう。また、想いに反することを強いられる中で、やらされ感を強く感じることもあるでしょう。

あるいは、周囲の様子を察することが苦手な場合、暗黙(あんもく)のルールがわからず、戸惑(とまど)いの連続かもしれません。人と関わることが苦手な場合、学校園生活のストレスはとても大きくなります。

見過ごせない感覚の過敏さ

近年、「感覚(かんかく)過敏(かびん)」が自閉スペクトラム症 (ASD) の特性として追加されました。感覚の過敏さがあると、学校園生活上で、困り事がたくさん起こってきます。

例えば、味覚(みかく)過敏(かびん)な子どもにとっての給食は苦痛です。また、聴覚(ちょうかく)過敏(かびん)な子どもにとって音にあふれた教室は居心地(いごこち)が悪いでしょうし、音楽会では、楽器の音がつらくて、部屋に入れないかもしれません。

注意の(てん)導性(どうせい)が強い(注意を向ける対象が次々と移っていく)場合、子どもにとって、物であふれたお部屋で集中するのはとても難しいことです。家庭よりはるかに多くの刺激(しげき)があって、自分の思い通りにならない学校園生活は、子どもにとってはストレスフルで、それだけで疲れてしまいます。

集団生活で下がりやすい不全感や自己肯定感

保護者の方・支援者など周囲の大人が、関わり方に気をつけ、環境整備に配慮していても、年齢が上がって様々なことがわかってくる中で、不全感(ふぜんかん) (十分にやれていない感じ)や苦手意識はおのずと感じてしまい、自信を持ちにくくなることがあります。子どもたちはその中でも自分のできることを精一杯がんばっているのですが、無理が続くと、シグナルとして症状が出現することがあります。

学校園に行こうとすると頭やお腹が痛くなるなどの身体症状化、「家では荒れる…」といった気分の波に激しさが見られることもあります。また、元気がなくなったり、音声チック (咳払(せきばら)い・鼻を鳴らすなど) 、運動チック (目をパチパチする)や吃音(きつおん) (きつおん・どもる)、寝ている時に叫ぶ ((や)響・やきょう) などの神経症状と、その症状化は様々です。

ベースに発達の凸凹がある場合、集団の中で不適応感(ふてきおうかん)が強まることが原因となって起こる、心理的な反応としての「二次障害」の可能性が高まります。

中でも、他者と関わる中でネガティブな感情を受ける機会が多くなることによって起こる「自己(じこ)肯定感(こうていかん)の低下」や「自己(じこ)評価(ひょうか)の向上しにくさ」の問題は大きく、それは、内省力(ないせいりょく)が高まってくる9、10歳頃から強まる傾向にあります。

*内省力: 「なぜ自分はそう思ったのか」「なぜそのような行動を自分がしたのか」と自分自身に問いかけて、思考や行動について分析する力のことです。

二次障害として生じる不適応症状は、年齢が上がるにつれて、さらに複雑化・深刻化する傾向があります。抑うつなどの神経症状や引きこもりの問題は、元々の子どもの特性ではないものの、今後、長期に渡って大きな問題となるため、最も心配される点です。

そのため、保護者の方・支援者は、子どもの特性を理解し、早期から、子どもが過ごしやすい環境を作っていくことが大切です。また、子ども自身が自分の特性を理解して、周囲に理解を求めようとする、「社会を生き抜く力」をつける支援も大切です。二次(にじ)障害(しょうがい)予防(よぼう)観点(かんてん)からも早い時期から気を付けてあげたいですね。

ベアービーのスタッフは、子どもが二次障害を起こさず、夢を持てる未来へ向かえるよう、子どもと保護者の方のコアサポーターとして寄り添っていきたいと考えています。